月が綺麗な夜だった。
その静けさが、まるで僕の胸の奥を写しているようで。誰にも言えない寂しさ、誰かをずっと想い続けた心。その全てを、やっと夜が優しく包んでくれた。日々、重ねてきた言葉や笑顔が、まるで夢だったかのように消えていく。あの白黒の記憶の中、「またね」ではなく、「さようなら」で終わったのが、何よりも痛かった。「好きじゃない」なら、せめてはっきり言ってほしかった。優しさに包まれながらも、どこかで僕だけが立ち止まっていたのかもしれない。
それでも、知っていたんだ。いつかこの想いは、「ありがとう」という一言に変わることを。それでも、ほんの少しだけ、その時間を引き延ばしていたかった。
あの日、君は最後のステージで踊っていた。
ひとつひとつの振り付けが、まるで僕との思い出をなぞっているようで。君の全てを、ただ見つめることしかできなかった。手を振る君。遠くなる背中。どこまでも鮮やかだった君の姿が、目の前の雪のように、音もなく積もっていく。
心と心は、時に近づき、時に遠ざかる。君の笑顔に救われ、僕は何度も立ち上がれた。だけどもう、君は「ごめんね」も言わずに、ただ、少しずつ、僕の前からいなくなっていった。
あの日、君と出会った夏の七月。
あのときの笑顔、あの一瞬の眩しさ、僕はきっと、一生忘れない。今は冬。寒さが、静かに胸に刺さる。誰もいない夜空に、煙花が咲いては消える。
最後にもう一度だけ、その光の中に、君の顔が浮かんだ。