2025年5月31日 雨

静かに、君の隣を歩いていた。気がつけば、とても遠くまで来ていたんだ。目が赤くなっていたことに、自分でも気づかなかった。でも、きっとそれくらい――自然に、君のそばにいたかったんだと思う。

君は楽しそうに、今の生活のことを話してくれた。僕はうなずきながら、その笑顔からどうしても目を離せなかった。ずっと好きだった、変わらないその笑顔。ただそれだけで、胸がいっぱいになった。

何度も一緒に通ったあの道は、今も昔と変わらない。前を向いて歩いていたあの頃、通るたびに季節がまるで味方してくれているように、いつも晴れていた。でも今は、その風景ですら、どこか遠くに感じる。

ふと思い出すたび、胸の奥がじんわりと痛む。涙がこぼれそうになる。だから僕は、そっと顔を背けた。君にこの気持ちを知られたくなかった。平気なふりをしていたけれど、心の中ではずっと波が揺れていた

「今日が終わったら、もう会わない方がいい」

そんなことを、ふと考えてしまった。だって、朝目覚めるたびに、何度も、何度も君を思い出してしまうから。

――君の顔にキスをしたいと思ったことがある。けれど、それは叶わなかった願い。あの瞬間、君はすぐそばにいて、笑ってくれていた。手を伸ばせば届きそうだったのに、僕はただ黙って、その距離を越えられなかった。

触れることもなかった。けれど、あの時間の温度だけは、今も心に残っている。目を閉じれば、まだ君の姿が浮かぶ。叶わなかった言葉たちが、もし形になっていたなら――そんな“もしも”ばかりが、いつまでも心を離れない。

今はもう、君は僕の隣にはいない。それでも僕は願ってる。どうか、君が少しでも幸せでありますように。

もう交わらないかもしれない。それでも、この気持ちを断ち切ることはしたくない。せめて眠る前に、心のどこかで、君の声が、あの優しい言葉が、もう一度だけ聞こえてきたなら――それだけで、今夜はきっと、眠れる気がする。