2025年5月22日 くもり
静かな潮の満ち引き、微かな光が揺れる深海を、僕は今日も音もなく彷徨っている。名もなき旅路、誰にも知られず、誰にも触れられず。
ただ、歌っていた。青いこの世界に、僕の声が届くと信じて。でも返ってくるのは、冷たい静けさだけだった。孤独という波が、時の狭間を漂っていく。
君に気づいてほしかった。ずっと待っていた。だけど近づいてきたのは、優しさじゃなく、激しい海嘯だった。風が吠え、波が怒るその音に、君の声を重ねてみたかった。
この胸に残されたのは、ひとりきりの心と、ひとつきりの命。それでも、僕は叫んでいた。届かないと知りながらも、何かを証明するように。
僕は——出会うことさえ叶わず、海の底に沈んでいった鯨。もし君がこの海を通り過ぎたとしても、僕の息遣いは、きっと君には届かない。
夢の中を幾度も巡り、そのたびに僕は、顔を上げて自分を示そうとした。たとえ孤独に生きたとしても、僕の声は、どこかで君と同じように震えていると信じたかった。
でも、僕は君の風景にはなれなかった。君の目に映るのは、遥かに豊かで、美しく、命に溢れる世界。その中で僕は、ただの透明な影。誰にも気づかれず、通り過ぎられてしまう存在。
君は、すべてを持っていた。光も、命も、誰かを笑顔にする力も。
僕はそのすべての隙間に、静かに揺れる一番小さな残像でしかなかった。